ムシの文化史
虫の文化史 ②(虫偏のムシ) ―人と虫が奏でる文化―
本の虫」という本
コダマ虫太郎
スチーブン・ヤング著「本の虫」の紹介です。
「本の虫の発見」
「本の虫」は、2001年、ルーマニアで、研究所の配線工事中に、電気技師によって、電子顕微鏡で発見されます。本の活字の、アルファベットの「Q」のベロのところで、虫が手を振ったように見えたのです。写真や証拠は現在のところありません。目撃証言だけのようです。と言うのも、本の虫は、ヒトの視線によって、まれに姿を現わすからでしょう。
無視できない症例
普通は、目撃証言だけだと「信憑(しんぴょう)性が薄い」と無視されるのですが、「書籍病」の場合、過去に臨床例が余りにも多過ぎるのです。活字以外の何かが介在する、としか考えられない症状です。本の虫は、ウイルスなのか虫なのかは判らない。感染した本の虫は、脳の神経細胞に寄生するらしく、そして、様々な「本に関する症状」を引き起こすのです。この症状を総称して、「書籍病」と呼んでいます。
「書籍病」の特徴
書籍病の症状は、「読み虫」による症状と、「書き虫」による症状に分けられます。読みたくなることから起きる様々な症状、書きたくなることから来る様々な症例、そして、それに伴う各種の障害です。
感染経路と分類
「書籍病」は、どこで、どうして感染するのでしょうか ?「本の虫」は書店や図書館など、本が置かれている場所に潜伏します。活字を読むことで感染しますが、空気感染なのか視線を通して感染するのかは未だ不明です。「本の虫」の大分類と代表的な症状ですが、学術的な大分類は二種類で、「読み虫類」と「書き虫類」に分かれます。
「読み虫類」
「読み虫類」に感染すると、文字や活字に激しい執着を持つようになります。代表的な虫は「ひたすら読み虫」です。しかし、最近では亜種の「漫画読み虫」が増えていて、「ひたすら読み虫」の絶滅が危ぶまれています。「読み虫類」は重症になると本がなければパニックになることもあります。悪化した場合は、「活字依存症」や「活字禁断症」、「書籍購入症候群」などの合併症を併発します。こうなると、完治不能になるだけでなく、書籍の過剰購入という経済的な困窮や、本の万引きといった犯罪の引き金にもなります。
「書き虫類」
「書き虫類」は、書くことに喜びを覚えるという、特異な症状を引き起こす「虫」の総称です。作家は、「小説書き虫」の代表的な感染者ですが、数少ない幸福者の例です。「書き虫」は不幸な境遇の人が感染する場合が多く、書くことで自己実現を求めます。しかし、ほとんどの場合、世に認められず、人生の悲哀を味わうことになります。その他では、「評論虫」が有名で、症状としては、「自分史症候群」、「自費出版症候群」、「ブログ症候群」、「応募症候群」などがあります。
つづく
次号は「虫退治伝説」です。