伝言板

No.9 人文虫学(私的分類学) ~人と虫との関わり学 (6) ~

現代文明も自然の一部

虫はおろか草一本、ゼロから創り出すことは出来ない人類。
この事実は、「私達の存続は、地球上の動・植物を含む生物系の食糧や鉱物系の資源を利用することだけによって許されていること」を暗示します。言い換えれば、宇宙や地球を含む自然系の恩恵によって生命を与えられていることと同義です。
現代の科学技術や経済といえども、この前提の下でのみ成立することが可能であって、これを逸脱するに足りる力量は持ち合わせていない、ということです。
我々としては、現代社会や文明がこうした制約的前提の範囲内でだけ存続(持続)可能であることを、普遍的な人類の所在地として客観的に認識することが、すなわち健全な認識というものでしょう。
こうした現代科学のスタンスと限界の認識こそ、自然界を含めた現代社会における科学と文明のあるべき方向性を導くための正当な入口と思われます。
「人間の英知が及ばない自然がそこに横たわっていること」、そして「自然を利用する範囲の中でだけ成立出来るのが文明社会の前提条件であること」、という認識があれば、科学(技術)と文明(物質)と文化(心)の均衡の上に成り立つ社会の実現も夢ではないでしょう。
こうした人類の位置と限界の認識は、太古からの人間の心情、つまり、森羅万象に対して、畏敬と親しみという相反する思いを抱きつつも総てを受け容れ享受した心情と、構造と理を異にするものではないようです。

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