おはよう虫太郎
13(6/28放送分)
今日は、先週から引き続き、省エネ住宅に用いられる事のある基礎断熱工法と、シロアリへの影響のお話になります。地球温暖化の原因とされる「温室効果ガス」つまり二酸化炭素ですが、この二酸化炭素の排出量を削減するために様々な取り組みがなされています。
はい。住宅にも建築物省エネ法として定められていて、高い断熱性能を持たせて冷暖房などに掛かるエネルギーを削減するために、色々な取り組みがなされています。ちなみに住宅を含む建物でのエネルギー消費量は、年々増加傾向にあります。
そうなんですか。それも地球温暖化の影響ですかね。最近の夏は室内で熱中症にかかり亡くなる方がいる程、気温が高くなりますからね。
そうですよね。異常な暑さですよね。
夏は常にエアコンを動かしている状態ですよね。
はい。断熱性と気密性が悪い建物では。たとえば夏に、冷房した時に出る冷気が逃げていく事になるので、エアコンは設定された温度を保つために、常に大出力で稼働しますから、その分電力を余計に消費します。
そうなりますよね。また逆に冬は冬で、暖房で温めた空気が逃げてしまうので、住宅や建物の高気密、高断熱化は二酸化炭素を減らすためにも急務ですね。
はい、という事で、基礎断熱工法が出てくる訳ですが、元々は1990年頃に北海道で水道管が凍結するのを防ぐ為に採用された工法です。
そうだったんですか。
はい。一般的な住宅では、床暖熱といって床板の裏側に断熱材を設置して、室内とは完全に区切りますから、床下自体は外気温と同じになります。
それでは寒さの厳しい東北や北海道では、床下の水道管は凍ってしまってもおかしくないですね。
はい。そこで基礎に断熱材を張り付け密閉してやることで、床下が室内と同じ温度で保たれるので、水道管は凍結しないで済みます。
なるほど。そういう理由で普及したんですね。
はい。そして元々シロアリは熱帯、亜熱帯が原産だと考えられています。
暖かい所が原産なんですね。という事は、シロアリは寒さに弱いのでしょうか?
はい。低温に耐えるような機能は持っていない、とされています。
という事は北海道には、もしかしてシロアリは生息していないんですか?
全くいない訳ではないですが、ごく限られた地域に生息りています。
という事は、シロアリが問題になる事は少なかったかもしれませんね。
はい、そうだと思います。ただ、北海道から東北に基礎断熱工法が普及するにしたがって、シロアリの問題が取り沙汰されるようになっていきました。
そうなんですか。北海道の環境には、基礎断熱工法が合っていたんですね。
そして2020年に、全ての新築建築物に対して、努力目標であった省エネ基準が義務化される予定でした。
そうなんですか。
はい。これは建物の断熱性能への評価だけではなく、消費されるエネルギー自体も評価の対象となります。その基準をクリアしないと建築許可が下りなくなります。
消費するエネルギーまで考慮されるんですね。
建築関係者の間では、いかにして省エネ基準に満たし建築許可を得る住宅を建てるか、という事に頭を悩ませます。
そうなりますよね。
そこで、寒冷地で普及している基礎断熱工法に注目し取り入れたわけです。
なるほどね。寒冷地で普及していたら、断熱効果もスゴく高そうな感じがしますよね。
そういう事もあったかもしれませんね。それと床断熱に比べて、気密性が確保しやすいそうです。
そういう理由もあったんですね。
はい、ただ結局は昨年末に、省エネ基準適合化住宅の義務化は見送られてしまいました。
結局、義務化されなかったんですか? 人騒がせですね。
はい。ただ、この義務化の予定が、基礎断熱工法の普及に一役買ったのは確かですね。
まぁ~そうですよね。
はい。基礎断熱工法の怖い所は、シロアリが住宅に侵入した形跡を隠してしまう事です。
はい。地下シロアリと呼ばれるヤマトシロアリが地面から建物に侵入する時に、基礎断熱では、基礎に貼られた断熱材の中に入り込んで建物にとり付くので、その痕跡が分りません。
はい。たとえば一般的な住宅であれば、初期の被害でも発見できますし、被害がなくてもシロアリ予防として、床下に薬剤散布する事も出来ますからね。
被害の早期発見と、シロアリに対する備えが基礎断熱工法では出来ませんよね。
はい。新築される住宅は必ずシロアリの防蟻処理がなされていますが、薬剤の効果は5年で切れてしまいます。基礎断熱工法では、薬剤の再処理が出来ませんから、その後住宅はシロアリに対して無防備になります。
それはイケませんね。
はい。ただ一応は、基礎断熱工法にも色々なシロアリ対策があるようです。
そうなんですか。一体どんな対策ですか?
はい。基礎断熱工法は本来、基礎の外側に断熱材を貼りますが、床下をベタ基礎にして基礎の内側に断熱貼る方法です。
ベタ基礎ですか?
はい。ベタ基礎とは基礎の立ち上がり、つまり壁の所だけでなく土間部分も含めて一体化した基礎ですから、シロアリが侵入出来る隙間が、ほとんどなくなります。
そうなんですか。それは良いですね。
はい。ただ水道管を伝ってシロアリが侵入したケースもありましたし、基礎の内側には 基礎が枝分かれしており、その部分をさらに余計に断熱材でカバーしなければ、そこから熱は逃げていきます。
完全に防げるわけではないんですね。
そもそも基礎断熱工法は、基礎の外側に断熱材を貼りつけるので、簡単に高気密、高断熱を実現できる事がメリットでした。また、コンクリートを蓄熱層として利用する場合も 断熱材を内側に貼るとデメリットになります。
そうなんですか。つまり基礎の内側に断熱材を貼るのは色々と妥協してという事ですね。
はい。そういうことです。それから、シロアリが通れないくらい目の細かいステンレスのメッシュで断熱材を覆って、シロアリが入れないようにするというのもありました。
そうなんですか。錆びたりしないんですかね?
ステンレスは錆びにくいだけで、錆びますから経年劣化はするでしょうね。それから、防蟻成分を混ぜ込んだ断熱材もありますが、シロアリの侵入を許したケースがあります。
薬剤が効かなかったんですか?
溶脱といって土の中の水分に薬剤が溶け出してしまい、結果的に防蟻効果がなくなりシロアリが侵入しました。
なんだかどれも、完璧にはシロアリを防げてないみたいですね。
はい。家と言うのは建ててから何十年と住み続けますから、シロアリ対策も一過性のモノでは意味がありません。
そうですよね。シロアリ薬剤の効果が5年ですから、再処理出来ない基礎断熱工法はやっぱり怖いですね。
こうした色々な基礎断熱工法における、新しい防蟻対策がなされる度に、施工店やメーカーは、これでシロアリは大丈夫と言いますが、それを言うには、根拠が乏しい様な気がします。実際に何十年も住宅を守り、ただの一軒もシロアリ被害を出さなかった時に初めて大丈夫と言える事だと私は思います。
そうですよね。お客さんにシロアリのリスクをある意味背負わせてしまっている訳ですからね。これが一般的な住宅であれば、起こらない問題ですからね。その分しっかりとした形で、安心させて欲しい所ですね。
はい、一般的な住宅でしたら床下を点検して、シロアリの被害がなければ、ないという事実をお伝え出来ますから、これ以上ない安心をお家の方は得る事出来ますからね。
そうですね。事実に勝る安心はありませんからね。
ちなみに、シロアリが生息出来る北限とされていた所が、さらに北へ伸びています。温暖化の影響なのか、はたまた住環境の変化がもたらしたモノなのか、ハッキリした事はまだ分りませんが……。
怖いですね。お家を建てるのは、一生に一度の事ですから、後悔のない様にして頂きたいですね。