おはよう虫太郎
12(6/21放送分)
今日はなんのムシのお話ですか。
今日はムシ自体ではなく、最近の住宅事情、省エネ住宅とシロアリについてお話をしたいと思います。
省エネ住宅とシロアリですか。
はい。世界各国で異常気象による自然災害が多発しており、この要因として、地球温暖化による気候変動が原因として考えられています。
はい。毎年のように、日本だけじゃなくて、世界各地で災害が起きていますよね。
はい。その温暖化の原因である温室効果ガス、つまり二酸化炭素などの排出を削減することが、世界中で取り組まれていますよね。
そうですよね。車は低燃費のものやハイブリッド車で、アイドリングストップ運動だったり……。
そうです。電気を作りだすときに、大量の二酸化炭素を排出しますから、使用する電気をおさえるために、電化製品も消費電力の少ないものが作られたりして。
はい。それから使っていない電化製品のコンセントを抜いたりして、待機電力をおさえるように推奨されていますよね。そういった省エネの取り組みがされていますね。
はい。住宅にも、建築物省エネ法として外皮の断熱性能、それから冷暖房や給湯、照明などの設備に消費するエネルギーを含めて評価されています。
そうなんですか。いろいろと細かく設定されているんですね。
はい、そして断熱性能のよい住宅では、冬の夜に寝るときに暖房をとめても、朝起きるまでに1~3度くらいしか温度が下がらないそうです。外気温の影響をほとんど受けないようになっています。
それはスゴいですね。
はい。そのために家全体を断熱材でおおって気密性を確保しないといけませんが、住む人には本当に快適で、冷暖房にエネルギーをほとんど使わないので、環境にも負担をかけないので、エコですよね。
そうですよね。たとえば冬の寒い朝でもお布団から出るのも苦じゃないですね。朝一番に起きて家事をする主婦の方にもスゴくよろこばれそう。魔法瓶のようなお家ですね。
そうですよね。主婦の方だけでなくご家族の方も「寒くて布団から出られない」ということがなくなりますね。外気温に影響されない、まさに魔法瓶のような住宅が理想的になります。
そうですね。
はい。しかし人間は呼吸をして二酸化炭素を吐き出しますから、これに加えて計画的に換気もおこなっていかなければなりません。
そうですよね。密閉されたお家なら人の呼吸によって、二酸化炭素がたまっていって空気が汚れていきますもんね。
はい。それに人の呼吸と発汗、炊事、入浴などで湿気もでますから、その除湿をして湿度のコントロールもしないといけません。
そうか。湿度が高いとカビが生えたりしますからね。高気密で高断熱、さらに換気に除湿にまで配慮しないといけないんですね。
はい、そういうことです。そして冷暖房にかかるエネルギーをおさえるために、ただ断熱化を図るだけではなく、さまざまな工夫をこらしています。風の流れを利用したり、夏は日差しをさえぎったり、逆に冬は日差しを取り込んだりとさまざまです。
あの手この手を使って省エネを実現していますね。
はい。そうしたモノのなかに、地熱を利用する基礎断熱工法があります。
地熱を利用する基礎断熱工法ですか?
はい。住宅の一番下のところ、つまり地面の上にコンクリートで作られた部分がありますよね。
はい。床から下の所、つまり住宅の床下の部分ですよね
はい、その床下の部分、コンクリートのところを基礎といいます。その基礎の上に建物本体が建っているわけですが、その基礎に囲まれた空間が床下になります。その基礎に断熱材を張り付けて、床下を密閉してやることで、地熱を利用することができます。
そうなんですか。
はい。地熱を利用することで、夏は外気より地熱のほうが、温度が低いので地熱に冷やされたコンクリートが、床下の空気を冷やし床がひんやりと冷まされます。
そうなんですか。
冬は、基礎や土間のコンクリートが、室温や地熱の蓄熱層としての役割を果たすので、床下から暖められます。
地熱を利用するとそんな効果があるんですね。スゴくよいアイデアですね。
そうですね。基礎断熱工法を取り入れる施工店も増えています。
そうなりますよね。
はい。ただ、その一方で、シロアリとの相性が悪く、シロアリ防除関係者からは一様に否定されています。
そうなんですか。どうして基礎断熱工法はシロアリと相性が悪いんですか?
はい。私達が駆除しているシロアリ、正式には「ヤマトシロアリ」といいますが、地下シロアリとも呼ばれ、枯れた木や土のなかに巣を作り、そこから地下5~30cmの深さに蟻道という、シロアリが通る道を作り枯木や建築物を加害します。
そうですよね。シロアリは地面からやってくるっていいますよね。
はい、そうなんです。通常ですと、シロアリが建物を加害しようとすると、地面から蟻道を伸ばして、土台などの木材にとり付きます。先程話したコンクリートの基礎に蟻道を作るので、それを見つけることで、住宅へシロアリが侵入したことを発見します。
そうですよね。だからシロアリの点検は、普通床下に入ってされていますよね。
はい。しかし基礎に断熱材を張り付けると、シロアリはその基礎と断熱材の間に蟻道を作って土台や木材にたどり着きますから、目視で蟻道を確認することができなくなります。
そうなんですか。よりによって基礎と断熱材のなかに蟻道を作るんですか?
はい。シロアリはエサとして認識していなくても、自分の行動範囲にあるものをかじる習性があります。とりあえずかじって、断熱材のなかに蟻道を構築してしまうようですね。
それはまた迷惑な習性ですね。しかしそれでは、ただでさえ発見しにくいシロアリの被害が、さらにわかりづらくなりますね。
はい。被害が床面に進んでいけば発見できますが、壁方向に伸びた場合は目視できませんので、かなり被害が進んだ状態で発覚することになります。
それから、基礎断熱工法では地熱を利用するため、床下と室内の空気が循環しますから シロアリを駆除するための薬剤が床下で使えません。
たしかに、薬剤は使いにくいですね。
はい。また被害が壁のなかに進行していった場合は、通常ですと、壁のなかに薬剤を注入しますが、省エネ住宅は断熱性能を上げるためにギッシリと断熱材が詰まっていますから、薬剤を注入する隙間もないので、壁に薬剤を注入することもできません。
それじゃあ床下も壁も、手出しできないことになりますね。いざシロアリがついてしまった場合は、どうやって駆除されるんですか?
はい。通常我々が行っているシロアリ防除は、非破壊防除といって、その名の通り建物を壊さないでシロアリの防除を行います。
はい。
しかし、基礎断熱工法の場合は、床や壁を大工さんにはいでもらって、薬剤処理をした後に、また大工さんに修繕していただくことになります。
大工さんにもお願いしないとイケなくなるんですね。これは相当に手間暇と費用もかかりそうですね、たいへんだ。
そうなんですよね。シロアリが侵入した証である蟻道を隠してしまうので、早期の発見ができませんし、またその兆候があったとしても、シロアリの予防処理自体ができなくなります。
あ~そうか。シロアリの予防処理もできなくなるんですね。
はい、そうなります。
基礎断熱工法は、省エネという意味ではスゴくよいものですけど、シロアリに対しては いろいろと問題が残りますね。はい、ということでお時間となりましたので、この続きはまた来週となります。