おはよう虫太郎
11(6/14放送分)
今日はなんのムシのお話ですか。
今日はノミのお話です。
ノミですか。血を吸ったりする、あのノミですか?
はい、そのノミですね。最近では犬や猫を飼っている方が刺されることが多いそうです。
ペットを飼っている方に被害が多いんですね。
はい。ヒトノミ、イヌノミ、ネコノミなどいますが、最近はネコノミが多いそうです。
ということは「猫ちゃん」がよく被害にあっているんですね。かわいそうに。
はい。名前はネコノミ、イヌノミとついていますが、お互いに犬、猫どちらにも寄生します。
そうなんですか。あえてイヌノミやネコノミというネーミングする必要があったのかしら。まぎらわしいですね。
たしかに。イヌノミに比べてネコノミは活動的で移動性に富むことから、現在は被害のほとんどがネコノミだそうです。
そうなんですね。犬にノミが寄生してても、そのノミは実はネコノミということですか。
はい。そういうケースが多いみたいですね。たしかにまぎらわしいですね。
ですよね~。
かつてはヒトノミが多くいたそうですが、衛生環境が向上するにしたがい、昭和30年代頃にその姿を消してしまいす。
そうなんですか。よいことですね。
はい。ですから、人がノミに寄生されることもなくなりました。
そうですよね。ノミが血を吸うことはなんとなく知っていましたが、日頃蚊のように刺されたりすることもないので、害虫としてのイメージ自体がないですね。
そうですよね。動物の血を吸ってピョンピョンと飛び跳ねるイメージでしょうか。
そうですね。テレビでやっていたんですが、ノミはジャンプした後の着地が下手というのを見たことがあります。
そういえば、やっていましたね。
はい。なんでも、寄生する動物に飛び乗ることだけを考えていて、失敗したときのことを考えていないとか。
はい。表皮が分厚いので頭や背中から落ちてもダメージがないようで、おかまいなしに飛んでは着地に失敗して、かなり滑稽な姿でしたね。
そうですよね。かなりおマヌケなイメージのノミです。
はい。そんなノミ達ですが、ヒトノミが姿を消した後も、イヌノミやネコノミは犬や猫に寄生していました。しかし、人と接する機会が少なかったので、問題となることもありませんでした。
そうなんですか。
はい。しかし、最近のペットブームによって、犬や猫が人のみじかになり、人からも吸血するようになり、皮膚病やアレルギー症などの被害をもたらしています。
そうなんですか。皮膚病やアレルギーまで、結構思っていたより「やっかい」な相手ですね。ノミのおマヌケな姿にまどわされていました。
そうですね。かの有名なペストを媒介するのもノミの仕業です。
ペストですか?
はい。もともとネズミ類の間で流行した病気です。ペストに感染したネズミの血を吸ったノミが、人を吸血することで感染します。たびたび世界的に流行しましたが、特に14世紀に大流行したことが有名です。一説によると、当時の世界人口を4億5000万人から3億5000万人にまで減少させたということです。
世界史の授業で習ったような……黒死病ですよね?うっすらと記憶にあります。
はい。日本では1926年に2人の死者を出したのを最後に、感染者は出ていないそうです。
よかったです、長い間日本では感染者は出ていないんですね。しかし意外とノミは怖い存在なんですね。
はい。ノミは選り好みしないでいろいろな動物から吸血しますから、こうした問題が起こってしまいます。
なるほど。着地を考えないでジャンプする、ノミの大雑把なところが、吸血する相手を選ばないズボラなところにもあらわれていますね。
たしかにそうかもしれませんね。さて、話を戻して最近のペットブームでネコノミやイヌノミによって再び人に被害を及ぼすようになりました。
はい。しかしそもそも昔から犬を飼っているお宅はありましたよね。
はい。昔は番犬として家の外で飼われていましたよね。最近は室内で飼われる方が多くなりましたから。
そういうことですか。たしかにいまは、番犬というよりは家族の一員として、犬や猫と接している方が多いですよね。
はい、ですからその分濃厚な接触をすることになり、ノミの被害にあう様になりました。
なるほど。たしかに以前に比べてペットと人の距離が近くなっていますよね。では具体的にノミとはいったいどんな生きものですか?
はい。まずノミは完全変態する昆虫です。卵から幼虫、さなぎを経て成虫になります。
完全変態なんですね。よく完全とか不完全変態とかいいますけど、その違いは何ですか?
はい。不完全変態は、幼虫のときと成虫のときで、あまり姿が変わらず、エサもおなじものを食べます。ゴキブリがよく見かける不完全変態の昆虫でしょうか。
たしかに、小さいゴキブリとテカテカした羽のついた大きなゴキブリがいますね。
はい。それがゴキブリの幼虫と成虫になります。そして完全変態の昆虫は、さなぎの時期が あり、幼虫と成虫の姿がまったく違って、食べるエサも幼虫と成虫とで異なります。
カブトムシや蝶がそうですよね。幼虫のときはいかにも幼虫、という姿をしていますから。 少し気持ち悪いですけど、成虫になるとカッコよくなったり、綺麗になりますよね。
そうです。そしてエサも、カブトムシは幼虫のときは腐葉土を食べますが、成虫になると樹液を吸います。
蝶では、幼虫のときはキャベツとかを食べますけど、成虫は花の蜜を吸っていますよね。
はい。ノミの場合も、成虫はオスメス共に吸血し、幼虫はウジのような姿をしており、食べるエサは、ノミ成虫の排泄物つまりフンを食べます。これが重要な蛋白源になっています。
へ~、幼虫はノミのフンを食べるんですか。
はい。それから人や動物の皮膚の剥離した有機物を食べています。あとは、瓜実条虫の卵を食べます。
瓜実条虫というと?
サナダムシの仲間ですね。犬や猫に寄生しますが、中間宿主としてノミに寄生します。
サナダムシですか。
はい。瓜実条虫はノミの体内で成長して、ノミごと食べられることで最終的な宿主である犬や猫の体内に入ります。まれに乳児に寄生することもありますが、こちらもノミを介しての感染となります。
え~、乳児に寄生するんですか。めったにないこととはいえ、それは怖いですね。しかしノミは、ペストは媒介するしサナダムシも媒介するしで、結構危険な寄生虫ですね。
はい。たしかに感染症の媒介者ではありますけど、幸いなことに現在の日本では吸血による直接的な害が、おもな被害になっています。
そうなんですか。取りあえずは安心していいですね。でも、やはりノミの被害にあわないことが一番ですよね。
はい、そうですね。まず、ノミの被害は露出した膝から下に集中します。ちなみにダニの場合は、皮膚が露出していない柔らかい部分に多く見られます。
なるほど刺された場所で相手がノミかどうかの目安になるんですね。それで実際のノミ対策はどうするんですか?
はい。ペットに薬剤入りのシャンプーや首輪を使ってノミを駆除します。ノミは宿主の体から離れることもありますから、ペットの寝床やノミが潜んでいそうなところを綺麗に清掃して、ノミやその卵を取り除いてから薬剤を散布します。卵やさなぎが残っていた場合のことも考えて、定期的にこれを繰り返す必要も出てきます。
家に入り込まれたら結構たいへんですね。
家に持ち込まないのが一番ですよね。草むらに入らないようにするとか、野良犬や野良猫にむやみに触らないとか、そういったことにも気をつけられたらよいかと思います。
そうですね。なにごとも後手後手になるとよいことはないですからね。日頃から気をつけて、こういった被害にあわないように心掛けていていただければと思います。はい、以上ノミのお話でした。