おはよう虫太郎
9(5/31放送分)
今日のお話は、先週から引き続き他のスズメバチの巣を横取りする、乗っ取りの習性があるめずらしいハチ、チャイロスズメバチのお話ですね。
はい。チャイロスズメバチは「モンスズメバチ」や「キイロスズメバチ」の巣に侵入して、その巣の主である女王バチを殺して、その巣を乗っ取ります。
ナゼか、その巣の働きバチ達は、チャイロスズメバチに仕えて働いてしまうという。
はい。ですから初期のチャイロスズメバチの巣は、チャイロスズメバチの働きバチと 「モンスズメバチ」もしくは「キイロスズメバチ」の働きバチが混在する、不思議な状態になります。
おなじ巣のなかに、種類の違うスズメバチ同士がなかよく一緒に暮らしているんですね。 なんかおもしろい。
はい。最終的には他種の働きバチは死に絶えてしまい、チャイロスズメバチだけになりますけど。
最初のうちだけなんですね。
はい。これを一時的社会寄生といいます。
これも寄生になるんですね。いわれてみれば、たしかに巣を横取りされる側は、寄生されていますね。
はい、この一時的社会寄生は、スズメバチのなかでは特に有利な習性になります。
そうなんですか。たしかにズルいですよね。本来は自分で「やるべきこと」を他のスズメバチに「やらせている」わけですから。
はい。寄生する生きものはどうしても卑怯な感じになりますよね。
イメージが悪いですよね。
そうですよね。スズメバチの生活史のなかで、一番たいへんで難しい時期が、女王バチが単独で巣作りしているいまの時期になります。
女王バチが1匹で巣作りして、卵の世話をしたり、なにかとたいへんな時期ですよね。
はい。全部女王バチが単独で「やらなければならない」ので相当にたいへんです。
女王バチは、一切の援助や手助けのない、シングルマザーみたいな感じになりますよね。 これはたしかにたいへんです。
はい。ですから、この時期の女王バチは、オーバーワークになりがちで、結果病気とか事故で死んでしまうことが非常に多いのです。
女王バチが、オーバーワークで死んでしまうほど過酷な時期なんですね。しかし、その苦難を乗り越えたものだけが、立派なハチの巣を作り、子孫を残したりできるわけですね。
そういうことです。チャイロスズメバチは、他のハチに寄生することで、そのたいへんな時期を完全にスルーできるので、これは他のスズメバチにない、大きなアドバンテージになります。
そうですよね~。それはたしかに有利になりますよね。
はい。
しかし他のスズメバチ達は、それこそ命がけで巣作りや子育てをして、家庭を築いていくわけですが、子供達がある程度育って親を手助けしたりして、生活が楽になってきたところを チャイロスズメバチが奪っていくんですよね。
まぁ~そうなりますよね。
それはまたヒドい話ですね。
そうですね。でも寄生する生きものは、特定の生きものが増え過ぎないように、その生きものを間引く役割があるので、しかたのない面もあります。
それはそうかもしれませんが、寄生するタイミングが最悪ですよね。
たしかに、たとえばオオスズメバチがいますよね。
はい。スズメバチのなかで一番大きくて獰猛で怖いハチですよね。
そうです。そのオオスズメバチは秋口になり、エサになる昆虫が不足してくると、集団で他のスズメバチの巣を攻撃して、その巣のスズメバチを皆殺しにしてしまい、巣のなかの幼虫を奪っていきます。
ひぇ~それはまた残虐ですね。
はい。しかしこのオオスズメバチの集団攻撃は、他のスズメバチが大量に発生するのをおさえる働きがあるといわれています。
残虐な集団攻撃には、そんな効果があるんですね。恐ろしいですけど……。
はい。チャイロスズメバチの一時的社会寄生にも、モンスズメバチやキイロスズメバチに対して、その発生量を抑制する効果が見込めます。
なるほど。つまり、チャイロスズメバチの一時的社会寄生にも、オオスズメバチの集団攻撃とおなじような効果があるんですね。必要悪って感じなんですね。
はい、そういうことです。しかし、他のスズメバチの発生量を抑制するオオスズメバチですが、じつは都市部での生活に向きません。
そうなんですか。それはありがたいですね。そんな怖いオオスズメバチに街中をうろつかれたら、怖くてしょうがないですよ。
たしかにそれは一理あります。しかし、そうすると都市部に順応するスズメバチがあらわれた場合は、そのスズメバチは「のばなし」になりますよね。
それはマズいですね。ということは都市部に順応したスズメバチがいるんですか?
はい。キイロスズメバチとコガタスズメバチが都市部の生活に、よく適応しています。
そうなんですか。
はい。どちらも問題になっていますが、特にキイロスズメバチが厄介で、最も多くの刺傷事故を起こしています。
そうなんですか。それはイケませんね。
キイロスズメバチは、日本に生息するスズメバチのなかでは、コロニーの規模が最大で、ピークのときに働きバチが千匹を超えることもある種類です。
そんなに働きバチが増えるんですか。それは危ないですね。
そうなんです。コロニーの規模が大きければ大きくなるほど、スズメバチは攻撃的になりますからね。
そんなキイロスズメバチが、オオスズメバチのいない都市部で、暴れまわったらたいへんなことになりますね。
そうなんです。そこで本題のチャイロスズメバチが出てくるわけですが……。
なるほど。チャイロスズメバチはキイロスズメバチに寄生しますもんね。
そういうことです。オオスズメバチにかわって、キイロスズメバチの発生量を抑制するのに貢献してくれるかもしれません。
なるほど。怖いキイロスズメバチが大量に発生するのを、チャイロスズメバチが抑えてくれるかもしれませんね。そう考えると逆に頼もしい。
そうです。ただみなさんからすると、もしそうなっても、実際にはキイロスズメバチがチャイロスズメバチに置き換わるだけで、怖いスズメバチには違いないんですけどね。
ダメじゃないですか。キイロスズメバチがチャイロスズメバチにかわるだけで、結局怖いのは一緒じゃないですか。
まぁ~そうですけど、ピーク時に1000匹を超えるキイロスズメバチと、一方チャイロスズメバチはというと、最大でも300匹位ですから危険度が違います。
そうですか~。300でも多いですけど。
駆除する立場で言うと、巣の規模がピークになっているキイロスズメバチの巣の駆除よりは、チャイロスズメバチの駆除のほうがはるかに簡単です。
駆除するのは楽になるのかもしれませんが、チャイロスズメバチは攻撃的で、刺されると「特に痛い」とおっしゃってましたよね。
そこは、刺されないように警告されたらゆっくりと「しゃがんで巣から離れる」を実践していただかないといけませんね。
そこですか。しかしスズメバチが警告することをご存じない方がほとんどですよね。
なんらかの形で周知していただくといいんですけどね。
そうですよね。せめてこのラジオをお聞きになった方は、ぜひ実践してみてほしいですね。そんな危ない場面がないことが一番ですけど。
そうですね。
さて、そろそろお時間となります。
はい。来週は、一時期絶滅を疑われたチャイロスズメバチが、なぜいまその数を増やしているのか探っていきたいと思います。
それはずっと気になっていました。不思議ですよね。次回が楽しみです。はい、ということで、以上チャイロスズメバチのお話でした。