おはよう虫太郎
8(5/24放送分)
今日はなんのムシのお話ですか。
今日は、「チャイロスズメバチ」という、他のスズメバチの巣を横取りする、乗っ取りの習性があるかわったスズメバチのお話です。
他のハチの巣を「横取り」ですか。たしかにかわっていますね。聞いたことがないです。
はい。働きバチが羽化して間もない頃に、他種のスズメバチの巣に入り込んで、もともとの主である女王バチを殺して、その巣の働きバチごと乗っ取ってしまいます。
え~「働きバチごと」ですか? その巣の働きバチは、自分達の親である女王バチが殺されるのを黙って見ているんですか?
はい。特に抵抗しないようですね。
そうなんですか。それは不思議ですね。
はい。そればかりか巣を乗っ取られた後は、ふつうにチャイロスズメバチに仕えて、その働きバチとして働きます。
そうなんですか。働きバチからしたら、チャイロスズメバチは「親の仇」なのに、逆に その手伝いをしてしまうんですか?
はい。チャイロスズメバチが産む卵を育てたり、巣を大きくしたり、つまり自分達の女王バチが生きていた頃とおなじように、仕事をこなすそうです。
それは、またなんというか、利用される働きバチ達は哀れですね。
そうですね。そんな「ずる賢い」チャイロスズメバチですが、北海道から中部地方の日本海側や関東の一部に分布する、めずらしい種類のスズメバチとされていました。
めずらしいスズメバチなんですね。生息地が限られています。どちらかというと、寒いところに住んでいるハチなんですね。
はい。そうなんです。それが不思議なことに、2001年に大阪と三重2008年に岡山で営巣、営む巣と書いて営巣といいますが、つまり巣を作って活動しているのが確認されました。
大阪と三重そして岡山と営巣していたんですね。これは南下してきているようにも見えますね。
そうなんです。
岡山にいたということは、わりと近いですね。山陰にもいたりして……。
はい、じつは2007年には鳥取市で女王バチの死骸が見つかったそうです。
え~、鳥取市で女王バチの死骸ですか。これ、ふつうに生息していそうですね。
はい。そうなんです。それから、京都や滋賀で働きバチが捕獲されたりしてます。
めずらしいはずのチャイロスズメバチが最近アチコチで見つかっている感じですね。
そうなんです。
これ、もしかしたら島根県にもチャイロスズメバチがいるかもしれませんね?
はい。じつは去年、はじめてチャイロスズメバチに遭遇し、その巣の駆除をしました。
へ~スゴイ。チャイロスズメバチは島根にもいたんですね。でも、それって、駆除してもよかったんですか?
はい。そのときは、希少なスズメバチなので、このまま駆除してしまっていいものか、どうかスゴく葛藤しました。
そうですよね。最近増えているとはいえ、めずらしいスズメバチですからね。
はい。たしか岡山で営巣が確認されたときには、ニュースにもなっていましたからね。
ニュースになっていたんですね。知らなかったです。しかし、これは余計にマズいんじゃないでしょうか。
そうなんです。「テレビ局に連絡したほうがいいのかな」とか「どこかの研究機関に報告したほうが……」とか。いろいろためらいながら、結局は駆除してしまいました。
それは、ためらいますよね。ニュースになるくらい、めずらしいスズメバチですからね。それでも結局は駆除しちゃったんですね。
はい、気になったので、その後調べてみました。
ほ~それで、どうでした?
はい。じつは、どうも最近はチャイロスズメバチの、その分布域と生息密度が増しているようですね。
ということは?
はい。つまりチャイロスズメバチは増えていました。
あ~やっぱり。チャイロスズメバチは増えていたんですね。
そうなんです。
まぁ~でも、それはよかったですね。係長は希少なハチを殺してしまった罪悪感にさいなまれなくてすみましたね。
まぁ~そうですね。そういう意味では助かりました。
よかったです。それはそうと、チャイロスズメバチの駆除はうまくいきました?
はい。チャイロスズメバチは規模こそ小さめですが、攻撃的で、毒液に含むセロトニンの量が多くて、刺されるとスズメバチのなかでも特に痛いそうです。
そうなんですか。攻撃的で刺されると特に痛いんですね。大丈夫でした? 刺されたりしませんでしたか?
はい。おかげさまで刺されはしなかったです。ただ近づいたらスグに働きバチに囲まれて警告されてしまいました。
警告ですか?
はい。ある程度大きくなったスズメバチの巣に近づくと「これ以上自分達の巣に近づくな」という警告をしてきます。それを無視してさらに近づいていくと刺されてしまいます。
そうなんですか。ハチは警告してくるんですね。いきなり刺してくるイメージでしたけど。
はい。ちゃんと警告してくれます。
「ちゃんと」なんですね。
そうです。ハチが刺すのはあくまでその身や巣を守るためです。むやみやたらと刺してくるわけではないですから、そこは「ちゃんと」になります。
なるほど。むやみにハチは刺してこないのですね。
はい。話を戻して、スズメバチの駆除をする際は防護服を着るのですが、これを着ると視界が悪くなり体の動きも制限されます。さらに厚手の手袋のせいで、作業性も非常に悪くなります。
まぁ~そうなりますよね。あの宇宙服みたいなかっこうの服ですよね。
はい。そういう感じの服です。そして夏の暑い盛りにスズメバチの駆除をしますから、作業が長引くと熱中症の危険もでてきます。
そうですよね。最近の夏の暑さは異常でからね。ご苦労様です。
ありがとうございます。ですから防護服を着た後は、極力迅速に作業をすませられるように下準備として、駆除に使う道具と防護服を駆除する巣の近くに運んでおきます。
はい。
経験的に、これくらいの距離なら大丈夫だろう、という場所に道具を運んでいる途中で あっという間に働きバチに囲まれ、警告されてしまいました。
へ~、他のスズメバチに比べて、チャイロスズメバチはスゴく敏感ということですよね。その状況でよく刺されなかったですね。
はい。こういう場合はゆっくりと「しゃがんで」ハチの巣から遠ざかるのが鉄則です。
あ~そうか。警告されたらハチの巣にそれ以上、近付かなければ刺される事はないわけですよね。
はい。ハチを刺激しない様にゆっくり動くことです。
なるほど。ゆっくり動くことがポイントですね。それでチャイロスズメバチの駆除はどうされたんですか?
はい、結局、防護服を着て道具を運びました。
暑いのに~。ご苦労様です。
はい。ありがとうございます。しかし防護服を着た後は、それまでの激しい警告がウソのように、チャイロスズメバチの反応はなくなりました。
へ~、スズメバチは黒色に反応するっていいますよね。
はい。防護服はご存知かと思いますが、白色です。白色の防護服にはまったくの無反応になりました。
白色の効果がスゴいですね。
はい。チャイロスズメバチは規模が小さく、働きバチの数も少ないので、駆除自体は簡単にすみました。
それはよかったです。さて、そろそろお時間となりましたので、このお話の続きはまた来週にお願いします。