おはよう虫太郎
7(5/17放送分)
今日は何のムシのお話ですか。
ちょうど今頃に、スズメバチの女王バチが巣作りをはじめる時期なので、注意喚起の意味もこめて、今日はスズメバチのお話です。
今頃からスズメバチの活動がはじまるんですね。
はい。まず越冬から目覚めた女王バチは、樹液を吸って長い冬眠でうしなわれた体力を回復してから、巣作りする場所を探します。このときに、かなり広い範囲に移動して巣作りする場所を探します。
そうなんですか。わざわざ広範囲に巣作りする場所を探すのはなぜですか?
はい。まず女王バチは、もともと自分が育った巣の近くで冬眠するといわれています。
そうなんですか。
はい。巣から飛び出した女王バチは、エサを取らずに交尾をして、そのまま越冬に入りますから、体力を消耗したくないので、必然的に巣の近くで越冬することになります。
なるほど。越冬前には体力を失いたくないですよね。
はい。そしてスズメバチの種類によってまちまちですが、ひとつの巣から数10匹から、数100匹の女王バチが産まれます。必然的に、冬眠から目覚めた女王バチのまわりには、その姉妹である女王バチ達がたくさんいることになります。
まぁ~そうなりますよね。
その姉妹の女王バチ達がみなその場で巣作りしてしまうと、エサとなるムシが不足してともだおれになる可能性があるので、そのリスクを回避するために広範囲に分散しているといわれています。
そういうことだったんですか。ちなみにスズメバチは、そんなにたくさんのエサが必要なんですか?
はい。そもそもムシを食べるのは、スズメバチの成虫ではなく、幼虫のほうなんですが、ひとつのキイロスズメバチの巣で、たとえばイエバエなら150万匹から200万匹くらい、捕食するといわれています。
え~、イエバエ200万匹ですか? ちょっと想像がつかないくらい、たくさんのムシを食べるんですね。
はい。スズメバチが生活していくには、それくらいたくさんのエサとなるムシ達が必要になります。
そうなんですね。たしかにスズメバチ同士が、近くに固まって巣を作ってしまったら、エサが足らなくなりそうですね。
はい。ただ、量産される雑食性や草食性の昆虫を、大量に狩ってくれるのでスズメバチは益虫でもあります。
そういう側面もあるんですね。
はい。だいたい雑食、草食性の昆虫は多産で、スズメバチのような肉食性の昆虫がいないと、大量に発生して問題になりかねません。
そうなんですね。なるほど、スズメバチは益虫でもあるんですね。
はい。ちなみにスズメバチ類はエサを狩る際の行動範囲も広くて、キイロスズメバチやオオスズメバチでは、巣からのその距離は5㎞にも達します。
結構遠くまでエサを探しにいくんですね。逆にいうと、そのくらい広い範囲を探さないとエサがまかなえないわけですね。
そういうことです。
その行動範囲を考えても、そうとう広範囲に分散しているのがわかりますね。
はい。ときどきスズメバチの巣ができても、その位置や場所が悪くて、駆除できないことがあります。もちろん住人のほうの生活に支障がないような場合の話ですが。
スズメバチは、どこにでも巣を作りますから、そういうこともありますよね。
はい。そんなときに巣を放置しておくと、また来年もハチが戻ってきて、おなじ場所に巣ができてしまうんじゃないかと心配される方がいます。
なるほど。お気持ちはわかります。しかし、さきほどのお話からすると、女王バチは分散して巣作りしますから、そういったことはまず起こらないですよね。
そういうことです。それから、スズメバチが使い終わった古い巣を残しておくと、いつか別のスズメバチがやってきて、その古い巣を「また使用するのでは」と聞かれることもあります。
たしかにその空になった巣を、別のスズメバチが再利用すれば「あらたに巣作り」しなくてすみますから、そのスズメバチからしたら手間が省けてよいかもしれませんね。
たしかにそうなんですが、結論からいうと古いハチの巣が再び使われることもありません。
そうなんですか?使えばいいのに。
そうですよね。しかし最初は女王バチが単独で活動していますから、最初から大きな巣では管理しきれません。
そういうものなんですかね。
はい。たとえば最初の卵を産んだ頃は、まだ気温も低く温める必要があります。そのために巣自体を温めないといけないのですが、大きな巣では女王バチだけで、広い空間を温めきれません。
それは、たしかに無理ですよね。
それから巣が雨にぬれたら乾かしたり、加えて清掃もしないといけないですよね。
なるほど。結構しなければならないことがありますね。たしかに、女王バチ一匹だけでは古い巣を使って生活するのは無理がありますね。
そうなんです。女王バチが産んだ卵から働きバチが羽化して、いままで女王バチが一匹でこなしていた仕事を手分けして行うようになり、さらに働きバチが増えて、やがて女王バチは完全に産卵しか行わなくなります。そうなると、加速度的にコロニーの規模は、拡大していきます。
そうなんですね。最初は1匹でたいへんな女王バチも、働きバチが生まれて増えていき、仕事が分業されて、生活が楽になっていくんですね。
はい。ですからスズメバチは、時期によってコロニーの働きバチのなどの数がかわってきますから、その都度働きバチの数に見合った大きさの巣に増築していくほうが、都合がよいのでしょう。
まぁ~、そうですよね。人間でもおなじことありますよね。お子さんができて家を増築したり、お爺さんやお婆さんが亡くなったり、また、お子さんが独立されたりして同居する人の数が減ってしまい、家の管理がたいへんということで「こぢんまり」としたところに引っ越される方もいますよね。
そうですね。そういうお話は、よく耳にします。
あたりまえかもしれませんが、その時々の状況によって、ちょうどいいサイズの住まいというのが人間にもスズメバチにもあるんですね。
はい、そう思います。ですからスズメバチの古い巣が、再び使われることはありません。ちなみに先程、大阪さんが家の管理がたいへんで「こじんまり」とした家に引っ越すとおっしゃいましたよね。
はい。まぁ~いわゆる「終の棲家」ですよね。
スズメバチにも その終の棲家があるんです。
へ~、そうなんですか。
はい、コガタスズメバチという種類のスズメバチなんですけど。
はい。
ピーク時でも、働きバチの数が50~150匹位の、スズメバチとしては小規模な種類になります。
それで小さい部類なんですね。
はい。本来はバレーボール位の巣を作るんですが、コロニーの活動が終わった後に、残った働きバチ達が、別の場所に野球のボールくらいの巣のようなモノを作ります。
巣のようなモノですか?
はい。ふつうスズメバチの巣には、幼虫を育てるための巣盤が入っています。
巣盤ですか?
はい。アシナガバチの巣みたいな幼虫が入っている盤のことですが、その巣盤がコガタスズメバチの終の棲家には入っていません。
なるほど。つまり子供部屋もない余生を過ごすための、本当に終の棲家なんですね。
そうなんです。そこに数匹の働きバチが固まって入っていました。おもしろいですよね。
おもしろいですね。人間の住宅事情に通じるものがありますね。はい、ということで、お時間となりました。今日は、これから巣作りを始めるスズメバチのお話でした。みなさんのお宅にも巣が作られていないかを、チェックして見るのもよいかもしれませんね。