おはよう虫太郎

5(5/3放送分)

今日は、なんのムシのお話ですか

 はい。シロアリの羽アリが飛び立つ時期になりましたので、今日はシロアリのお話です。

 また今年も、羽アリの季節になりましたね。日頃は人目につかない暗闇で生活しているシロアリが「白日の下に現れる」といいますか、人前に姿をあらわす季節ですよね。

 そうですね。シロアリは土壌性昆虫ですから、地面や朽木のなかに住んでいて、人目につかないですが、いまの時期に羽アリを出すので、それでシロアリの被害や、その存在に気づいて駆除の依頼をされる方も多いです。

 あ~そうなんですね。それはまさしく「雉も鳴かずば撃たれまい」ですね。 

 そうですね。ちょっとかわいそうな気もしますが、けっして安くはない、お金を使って建てたお家を、シロアリに「ボロボロに」される前に、気づかせてくれるので「ありがたい」といえば「ありがたい」ですけどね。

 たしかに。

 それでは、なぜシロアリは羽アリを出すかといいますと、それは巣別れになります。 

 羽アリは、シロアリにとっては次の世代を担う子供達になりますよね。

 はい。オスとメスの羽アリが飛び立って、それぞれにパートナーになる相手を見つけ出してカップルになり、新しい王と女王となって、あらたに巣を創設していきます。 

 そうですね。つまり新しい家庭を築いていきますよね。

 はい。よく質問されることですが、羽アリの色は黒いです。 

 そうですよね。シロアリだから、羽アリも白いと思っている方、いらっしゃいますよね。 

 はい。羽アリは外皮に、「メラニン」という黒い色素を持っているので黒いのです。

 メラニンというと、シミとかの原因になり、女性の皆さんが嫌がるあのメラニンですか?

はい。そのメラニンです。メラニン色素には、紫外線から皮膚を守る、重要な働きがあります。 

 そうなんですか。羽アリは日中に飛び出しますから、モロに紫外線をあびてしまいますからね。

 そうなんです。せっかく飛び出しても紫外線を浴びて、死んでしまっては意味がないですからね。

 メラニンがないと、シロアリは紫外線で死んでしまうんですね。

 はい。シロアリのDNA~遺伝子は紫外線で損傷しますし、食べた木材を消化するのを助ける、共生微生物も死滅します。

 へ~、紫外線をあびると、遺伝子が傷ついたり、共生する微生物が死んでしまうことにもなるんですね。

 それと、シロアリの体内の「ノルハルマン」という物質は、紫外線で有毒化するそうです。

 体のなかで毒が出来ちゃうんですね、シロアリは。絶対に紫外線をあびたらいけない体なんですね。

そういうことです。しかしもともとシロアリは、日の当たらない暗闇で生活していますからね。 

そう考えるとシロアリが紫外線に、(さら)される事自体がふつうはないですよね。

はい、そういうことです。

しかし、外に出て、紫外線から身を守る必要のある羽アリだけに、メラニン色素をもたせるって、よく出来ているというか、非常に合理的ですよね。

 そうです。そういうわけで、羽アリだけ体の色が黒くなります。生き物の世界は大体合理的で無駄がないですね。ちなみに、もしみなさんがシロアリの巣を見つけることができたら、黒い王と女王アリが見られます。

 あ~、そうか。羽アリは王と女王になりますもんね。白いシロアリの中に黒い王と女王アリがいたら一目瞭然ですよね。

はい。さて、飛び立った羽アリは、みずからの羽を切り落として歩いて、あたらしい家庭を築くパートナーを探します。

 歩いて配偶者を探すんですね。なかなかたいへんそう。                                                  

 はい。案の定簡単にはパートナーを見つけられないようです。

 でしょうね。たとえばフェロモンとかを使ったりして探さないんですか?

 はい。一応メスがフェロモンを出すみたいですが、かなり近づかないと、オスもわからないそうで、基本的にトコトコ歩いて探し回るようです。

 結局歩いて探し回るんですね、それはたいへんだ。

 運よくパートナーを見つけた羽アリは、メスが前を歩きオスがそれに続く「タンデム」を組んで移動していき、適当な場所を見つけて、巣を構築していきます。 

 メスが前を歩くんですね。シロアリの世界は「かかあ天下(でんか)」なんですかね?

 どうなんでしょうかね。おもしろいことにオス同士でも、タンデムを組むことがあるそうです。

 え~、オス同士ですか~? いまなにかと話題のLGBT~同性愛的なことですか? 

 そういうことじゃなくてですね、たとえばパートナーを探して歩き回っているときに、アリなどの外敵に遭遇したりすることもありますよね。

 ま~長いこと探して歩き回っていれば、そういうこともありますよね。 

 そんなときに、2匹でタンデムを組んで歩いていると、アリは2匹同時に襲うことはできませんよね。

 はい。あ~、なるほど。アリに襲われても、タンデムを組んでいたら、どちらかは生き残れますね。

 はい、そうなんです。ただかならず襲われるのは、先頭の羽アリになります。後ろの羽アリは、そのときに逃げることができます。

 え~、そうなんですか。じゃあ「どっちも」先頭になりたくないんじゃないですか?

 はい。ですから、2匹のオス同士が出会えば、かならず後ろのポジションを奪いあうといいます。

そりゃ~そうですよね。前を歩くことは完全に、イザというときの保険というか「(おとり)」ですからね。 

 はい。ただ、たいていは体の大きなほうが、後ろの位置を確保するようです。

そうなんですか。体の大きいほうが勝つんですね。なんだかドラえもんのジャイアンが頭に浮かびますね。

たしかに。このとき、つまりオス同士でタンデムをしてるときに、メスと出会えば後ろの羽アリが、やはりメスを獲得するそうです。 

それは、やっぱりジャイアンじゃないですか。 

はい、そうとう自己中心的ですよね。

敵に会えば前の羽アリを差し出して、メスの羽アリに出会えば自分が「ちゃっかり」その配偶者におさまって、これはまさしくジャイアニズムですね。

たしか彼の口癖は、「お前のモノは俺のモノ、俺のモノは俺のモノ」でしたよね。

あ~、それですそれです。相通じるモノがありますよね。オス同士のタンデムの後ろは ジャイアンポジションですね。

 それは「言い得て妙」ですね。

 ですよね。

 でも彼らもなんとか生き残り、その目的~つまり配偶者と出会い、なんとしてもあたらしい巣~家庭を築こうと必死なんです。

そうなんですか。理不尽な気もしますが、知恵をしぼって頑張っているんですね。せちがらい。

 そうですね。さて来週は、メスの羽アリ同士が出会った場合のタンデムのお話をしたいと思います。

 へ~、おもしろい。メス同士でもタンデムを組むことがあるんですね。さて、お時間となりましたので今週はこのへんで。  

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