伝言板

No.8 人文虫学(私的分類学) ~人と虫との関わり学 (5) ~

科学と経済の幻想

科学技術を基盤とした現代の経済社会は、確かに人々の生活を豊かにする素質を備えています。しかし一方で、一度この経済社会に足を踏み入れてしまうと、それが全てであるかのような錯覚を人々に抱かせ支配する作用も備えています。そうした錯覚に陥ってしまうと、「経済社会の虜(とりこ)」になったのも同じで、歴史と経験によって培われた人間本来の感性は封印され、通貨行使権の獲得という経済ゲームを約束事とする幻想の世界をさまようことになります。
もしも、科学技術が、我々の生命維持にとって最も重要な食料である、穀物や動物性蛋白質などの食材を、ゼロから合成することに成功したなら、現代科学と経済を神とするこの現実の経済社会という一神教の原理主義に帰依しても悔いはないのかも知れません。しかし、現代の科学技術は人類の生命源である「食糧」について、せいぜい自然物に手を加える力しか持ち合わせません。未来においても、虫はおろか草の種子すら自ら蛋白質を合成して一から創り出すことは、まず出来ないことでしょう。
いつの時代も社会に幻想がない訳ではありませんが、自然環境を含めて人間の生活にとって身近な事柄が最もなおざりにされたのが、現代の社会における幻想の特徴といえるようです。

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