伝言板

No.3 人文虫学(私的分類学) ~人と虫との関わり学 (2) ~

人間の文化と虫の関係

人間にとって虫との自然な関係は、「食べる」「見る」「聴く」ことにあると思われます。「迷惑する」「怖がる」などは、むしろ後発的で不自然な関係でしょう。人は虫を食べて命をはぐくみ、虫の姿を見て遊び、虫の音を愛でて情緒を養い、世代をつないで来たとも言えるのです。
農耕文化という一品種多量生産で、特定の虫が大量発生するようになって、また、ごく僅かの種類の虫が疫病の媒介に関与することが解明されて、文明社会か過剰なまでに文化(心)とともに虫を敬遠することになります。

虫を食べること

虫ガ嫌いな人は否定的かも知れません、しかし今でも世界の各地でご馳走として虫が扱われている習慣がある以上、農耕文化以前は我々の先祖も虫を蛋白源の一つとして採取していたと考えるほうが自然です。
ちなみに、タイでは「タガメ」はご馳走で他の虫よりも高価です。食べるとカメムシの香りと味がしますが、それが美味しさの秘密です。野菜でいえば、中国では香菜(こうさい)、東南アジアではパクチー、欧米ではコリアンダーと呼ばれる野菜の味です。コリアンダーはラテン語でコリス=カメムシの意味です。ソースの原料として使われ、香水にも使われるから、美味しい味なのでしょう。

虫を見ること遊ぶこと

どこの国の子供たちでも、虫は遊び道具の一つです。虫が少ない日本の都会の環境でもカブトムシやクワガタは依然子供たちの人気者です。電池やリモコンなしで彼らは自分から動きます。科学や技術では到底できない、よくできた遊び道具として直感しているのかもしれません。そんな子供たちもいつしか商業的な遊び道具へと興味の対象が移って行き、ついには買えるものだけを欲しがる大人になって行きます。「虫屋」と呼ばれる人たちは、疫学的(統計的)に見れば、俗人の成長過程に組み込まれなかった一種の変わり者ですが、草木一本・細胞一つ作れない科学技術の産物に興味を奪われなかった点ではハイソサエティーに違いありません。(つづく)